TANKA 短歌のあらすじと無料視聴方法を紹介

“歌集「サラダ記念日」で脚光を浴び、今なお数多くの傑作を作り続ける歌人俵万智の処女小説を映画化した作品です。メガホンを取ったのは、こちらもヒット作の作詞で著名な作詞家の阿木煬子氏。恋の歌のヒットメーカーがタッグを組んだ注目作を、黒谷友香さんが妖艶なヌードとともに彩っています。

物語は2人の男性と、1人の女性との間で緩急を変えながら展開していきます。時にゆるやかに時に激しく、女性的な情熱を感じさせるストーリーはまさに激情の歌人の真骨頂です。作者のファンはもちろんのこと、短歌や俵万智という作家に興味がない視聴者にもダイレクトに響いてくる不思議な画力を持っています。

主人公である33歳のフリーライターの薫里は、仕事に恋にと充実した生活を送っています。包み込んでくれるような頼りがいのある恋人に、働く女性として自分で勝ち取ったキャリアに支えられた毎日はまさに人生の絶頂期でした。

しかし、それはほんの一面です。恋人というのは妻子のあるカメラマンで、ずるずるとした関係は9年も続いていました。

一時の快楽に身を沈めながら、恋人はあるべき場所へと帰っていく日々を過ごしています。それも心地よいと感じていたある日、魅力的な年下のバイオリニストの圭と出会います。恋人への気持ちは変わらないままに、圭にも身を任せてしまう薫里なのでした。自堕落とも思われがちな恋愛に、不思議な快感を感じてしまう主人公の薫里の姿を黒谷友香さんが巧みに演じきっています。

2人の男性との間に揺れながら、どうして2人を一度に愛してはいけないのかと素直な疑問を投げかける薫里。そのしなやかな生きざまが魅力です。やがて薫里の日常は、満ち足りていたはずの恋愛生活から徐々に乖離し始めます。

欲求のみに生きるのではなく、幸福とは人生とはという複雑で大きすぎるテーマと向き合うようになっていく薫里。画面の中の主人公の精神の成長を、如実に見られる瞬間と言えます。赤裸々な恋愛模様の形を借りながら、女性が本当に望むものとはという深いテーマにも切り込んでいます。

この映画は、だれでも一度は経験したことのある恋の揺れを等身大で表現しています。視聴者自信がその時感じた苦しみまたは喜び、あるいは過ぎ去った思い出をリアルに刺激してくるような描画表現が続きます。

特に、現在40代近くの女性は作中の薫里の様に一度激しい恋愛の山を越えている方も多いかもしれません。黒谷友香さんの成熟した肢体は、そのような既に人生の絶頂を経験し今は当時を振り返るという世代にとっても自分を預けられる存在です。視覚と聴覚から、見る人を魅了し渦の中に引き込んでいきます。

もちろん不倫、不誠実な恋愛は倫理的に許されるものではありません。その点で、評価の分かれる作品でもあるようです。しかし三角関係や不倫というテーマを扱いながらも、貫いているのは女性がその人生を自分の力で歩き続けていく姿なのです。揺れているように思われた女性が、本音や理性との闘いの果てに成長という成果を手にしていきます。

結局、人生の幸福とは何なのかについて倫理の裏側を突いてくる構成を取る映画と言えます。男性はなぜ幸福な家庭を築きながら他の女性に惹かれるのか。青年はほかに恋人がいると知りながら、年上の女性に魅了されてしまうのか。単純な問題かもしれないこのポイントを、見手の感覚に訴えることでそれぞれの心に寄り添うような作風を作り上げているのです。

奔放な恋愛にあこがれるということは、女性の存在や精神がまだまだ社会的心理的に拘束されているという証ではないでしょうか。短歌という形、ラブソングという形によって女性のみずみずしい感性を描き続けてきた作者及び監督だからこそ、こうした表現も可能にしています。"

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